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自分の名前が刻まれた墓を自分で参る、なんていう経験は
なかなか出来ることや無いと思う。
荒れた墓石をぼんやり見詰めて思う遠い記憶は、直ぐに現実へと
引き戻されて。——気が付いたら、何時もの穏やかな笑顔が
あったから、思わず笑った。置き去りにされていた二つの線香と
手紙の謎を相手に託して、可愛らしいヤキモチを耳に聞き入れ
思わず抱き締める。——相変わらず、暖かいなぁ。あんさんは。
心配せんでもえぇよ。わいはずっと此処におるから。
あんさんの側におるさかい、そんな不安そうな顔、せんでも。
——まぁ、拗ねたあんさんの顔も。 可愛い、って思ってまぅんやけどね。
なかなか出来ることや無いと思う。
荒れた墓石をぼんやり見詰めて思う遠い記憶は、直ぐに現実へと
引き戻されて。——気が付いたら、何時もの穏やかな笑顔が
あったから、思わず笑った。置き去りにされていた二つの線香と
手紙の謎を相手に託して、可愛らしいヤキモチを耳に聞き入れ
思わず抱き締める。——相変わらず、暖かいなぁ。あんさんは。
心配せんでもえぇよ。わいはずっと此処におるから。
あんさんの側におるさかい、そんな不安そうな顔、せんでも。
——まぁ、拗ねたあんさんの顔も。 可愛い、って思ってまぅんやけどね。
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淡く穏やかに、優しく揺れる茜色の大空は。
まるで、貴方そのもののように。
——私の心を、満たしてくれる。
道を歩いていたら、通り過ぎようとしたショーウィンドーの内側から
此方へと向けられる、可愛らしい視線にふと、足を止めた。
栗色のふわふわした毛並みの縫いぐるみ。茶色の瞳に桜色の肉球。
きゅ、と結んだ口元が愛らしく、なのに纏う着物は深緑色の和服と
何たる不思議なアンバランスさを持つ猫だった。
——はて、誰かに似ている、と首を傾げ。
嗚呼、と一人納得するように小さく頷いた。
———「彼」に似ているんだ。
思い返して、含み笑い。
暫し、目と目が合ってしまって。
そのまま通り過ぎることも、店の前から離れることも出来ずに
経過した時間は、大凡十分。
———「アレ、包んでくれぇへん?」
結局連れて帰ることを決めてしまったのは、その瞳が何だか
とても、淋しげに見えてしまったから。
「どうせなら、笑って欲しいやん」
なんて、縫いぐるみに言ってしまった。思ってしまった。
——我ながら、少女趣味だなぁ、なんて。
少々重たくなった手の中へちらり、一瞥をくれながら
歩く夕暮れの道。——少しだけ、心は温かくなった。

まるで、貴方そのもののように。
——私の心を、満たしてくれる。
道を歩いていたら、通り過ぎようとしたショーウィンドーの内側から
此方へと向けられる、可愛らしい視線にふと、足を止めた。
栗色のふわふわした毛並みの縫いぐるみ。茶色の瞳に桜色の肉球。
きゅ、と結んだ口元が愛らしく、なのに纏う着物は深緑色の和服と
何たる不思議なアンバランスさを持つ猫だった。
——はて、誰かに似ている、と首を傾げ。
嗚呼、と一人納得するように小さく頷いた。
———「彼」に似ているんだ。
思い返して、含み笑い。
暫し、目と目が合ってしまって。
そのまま通り過ぎることも、店の前から離れることも出来ずに
経過した時間は、大凡十分。
———「アレ、包んでくれぇへん?」
結局連れて帰ることを決めてしまったのは、その瞳が何だか
とても、淋しげに見えてしまったから。
「どうせなら、笑って欲しいやん」
なんて、縫いぐるみに言ってしまった。思ってしまった。
——我ながら、少女趣味だなぁ、なんて。
少々重たくなった手の中へちらり、一瞥をくれながら
歩く夕暮れの道。——少しだけ、心は温かくなった。
胡散臭い館。飛び散る血液。艶やかな笑みと——狂気を欲する両性悪魔。
タチ悪い。傷口抉って血を絞れば絞る程、理性が欠ける甘い罠。
痛みすら消えて、麻痺の感覚を通り越した所に在る、己の狂気と淫楽。
——麻薬以上に、厄介な代物。
そして、何だ。
…——血が、足りねぇ…———(溜息)
タチ悪い。傷口抉って血を絞れば絞る程、理性が欠ける甘い罠。
痛みすら消えて、麻痺の感覚を通り越した所に在る、己の狂気と淫楽。
——麻薬以上に、厄介な代物。
そして、何だ。
…——血が、足りねぇ…———(溜息)