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淡く穏やかに、優しく揺れる茜色の大空は。
まるで、貴方そのもののように。
——私の心を、満たしてくれる。
道を歩いていたら、通り過ぎようとしたショーウィンドーの内側から
此方へと向けられる、可愛らしい視線にふと、足を止めた。
栗色のふわふわした毛並みの縫いぐるみ。茶色の瞳に桜色の肉球。
きゅ、と結んだ口元が愛らしく、なのに纏う着物は深緑色の和服と
何たる不思議なアンバランスさを持つ猫だった。
——はて、誰かに似ている、と首を傾げ。
嗚呼、と一人納得するように小さく頷いた。
———「彼」に似ているんだ。
思い返して、含み笑い。
暫し、目と目が合ってしまって。
そのまま通り過ぎることも、店の前から離れることも出来ずに
経過した時間は、大凡十分。
———「アレ、包んでくれぇへん?」
結局連れて帰ることを決めてしまったのは、その瞳が何だか
とても、淋しげに見えてしまったから。
「どうせなら、笑って欲しいやん」
なんて、縫いぐるみに言ってしまった。思ってしまった。
——我ながら、少女趣味だなぁ、なんて。
少々重たくなった手の中へちらり、一瞥をくれながら
歩く夕暮れの道。——少しだけ、心は温かくなった。

まるで、貴方そのもののように。
——私の心を、満たしてくれる。
道を歩いていたら、通り過ぎようとしたショーウィンドーの内側から
此方へと向けられる、可愛らしい視線にふと、足を止めた。
栗色のふわふわした毛並みの縫いぐるみ。茶色の瞳に桜色の肉球。
きゅ、と結んだ口元が愛らしく、なのに纏う着物は深緑色の和服と
何たる不思議なアンバランスさを持つ猫だった。
——はて、誰かに似ている、と首を傾げ。
嗚呼、と一人納得するように小さく頷いた。
———「彼」に似ているんだ。
思い返して、含み笑い。
暫し、目と目が合ってしまって。
そのまま通り過ぎることも、店の前から離れることも出来ずに
経過した時間は、大凡十分。
———「アレ、包んでくれぇへん?」
結局連れて帰ることを決めてしまったのは、その瞳が何だか
とても、淋しげに見えてしまったから。
「どうせなら、笑って欲しいやん」
なんて、縫いぐるみに言ってしまった。思ってしまった。
——我ながら、少女趣味だなぁ、なんて。
少々重たくなった手の中へちらり、一瞥をくれながら
歩く夕暮れの道。——少しだけ、心は温かくなった。
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