忍者ブログ
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新CM
[07/11 金魚の人]
[07/11 彫師背後]
[12/14 人工天使の人]
最新TB
プロフィール
HN:
Reno
性別:
非公開
趣味:
妄想、空想、脳内創作活動全般。
自己紹介:
どうも。店主のレノです。此処は「堕落街」のキャラサイト。
知らない人、18歳未満の方、同性愛に嫌悪感を感じる方は、廻れ右が吉。
そうでない方は、どうぞごゆっくりおくつろぎ下さい。
焙じ茶ですか。それとも宇治茶?御饅頭と水菓子もご用意致しました。
——ようこそ。風月茶屋へ。
バーコード
ブログ内検索
来客表示
アクセス解析
金魚
涼。愛でて下さい。
忍者ブログ
[PR]
http://fuugetutyaya.blog.shinobi.jp/
…欲しいモノは、そんなモノじゃないのに。
ADMIN | ENTRY
 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コンクリ張りの一室。寒々しく生活感の無い部屋。
所有物はパイプが剥き出しの簡易ベッドと硝子のテーブル
古ぼけたソファに大きく育ちすぎたゼラニウムとサボテンの鉢植え、のみ。

漆黒のカーテンが陽光を遮る暗い室内。
未だ夢現の狭間にある意識を無理矢理覚醒させれば、
一通の電子通信を小さな機械で某所に宛てる。軋むベッドの上

「時間、午前一時五十二分。事後処理を頼む」

短い文章を打ち終えれば、唯ぼぅやり見詰める、冷たい色をした天井。

必死に助けを請いながら、されど願いが届かなかった時の。
最後の最後に彼らが見せる、あの澱んだ刹那の瞳。
決死に見開かれた双眸から、徐々に光が失われていく瞬間は。

——何度経験した処で、一向に馴れる気配が無い。



「…早かったな。今、済んだトコだ」
綺麗に着こなしたスーツ姿に無表情な面を引っ提げながら、挨拶を寄越す彼に
緩慢な仕草で片手を上げ、此方も挨拶代わりと吐き出す煙草の紫煙。

「…いつも思うんだが。御前が連れてくる奴らは皆凄惨だな」
片足が千切れた者、全身銃弾で蜂の巣にされた者、顔中に大火傷を負った
若い女性、胴体を二つに切断された幼子、全身毛むくじゃらの黒焦げ遺体。

瞬き一つしない相手に、そんなことを不意に囁かれ。
何だ今更そんな事、と朽ちた吸い殻を靴の爪先で踏みにじりながら振り返る矢先。

「苦しく、ならないのか」

不意に問われ、思わず細める双眸。

「助からないと解っていて、何故構う」

尚も立て続けに向けられる、疑問符とも付かぬ疑問符。

血と体液にまみれた片手を此方へ懸命に伸ばす相手の
生命線という名の炎はもう、消えてしまうモノと解っているのに。


「事後処理は良い。俺の仕事だ。綺麗に整えて、身内に返そう。
身内が居ないのなら、弔ってやる事も出来る」

整った顔に笑みすら浮かべず、淡々と詞を続ける死化粧師。
助けることの出来なかった遺体を彼に引き取って貰っていた。いつも。
引き取って、外観を綺麗に整え、身内に引き渡すか、或いは
葬儀までをも受け持って貰う。——尤も、己が引き受ける患者は
訳ありが多く、大抵は淋しい結末となることが殆ど。
新しい煙草をくわえる己に、無言でライターの火を差し出す相手の恩恵を
受けてから。「助かってるよ」と素っ気なく返す詞。

「その傷はどうした」

不意に話の方向をねじ曲げられ、示される左腕。
黒いシャツに染み付いた真新しい血液の跡。ざっくり裂かれた傷口を
手当すらせず、衣服の下で剥き出しに揺らしていたら、案の定突っ込まれた。

「患者に引っ掛かれた」
すぐ治ると微かに笑って、何かの発作のように唯、吐き出す紫煙。


「…御前、死ぬぞ。こんなことを続けていたら、近い内に」
小さな溜息と同時にゆっくり首を振りながら、呆れるように、言われた。

此もまた、いつもの日常。何度となく、今までに繰り返されたやりとり。


「——医者だから」
そして、また同じ詞を返すのだ。
医者だから、目の前で死にかけている輩が居れば助けたいと願い
苦しんでいる輩がいれば、それを取り除きたいと望む。


「馬鹿な奴だよ。御前は」
溜息混じりに蔑むような詞の後で。
せめて飯と睡眠くらいはちゃんと取れと、肩を叩かれ去っていく、その
後ろ姿を静かに、見送った。


毎日毎日、目の前を通り過ぎていく命という名の光。
身動きが取れなくなる程の痛みと苦しみ。
痛いのは己よりも患者だと、振り切って唯相手と向かい合う、そんな日々を。

遡れば、己とて昔は無慈悲に花の芽を摘むように、人の命を
面白半分に奪っていた時期があったのだと、思い知る。

——贖罪だ。零れていく命を頼りない掌で掬おうと足掻くことで、
昔の罪を償っているような気持ちに浸っているだけ。

自分は、結構なエゴイストだから。


「…さて。言われちまったし、飯でも食いに行くかね」

せめて安らかに眠ってくれたら良いと、救えなかった幼い命を一瞬
振り返り、心の中で十字を斬ろう。せめて、道に迷わぬように。
真っ直ぐ天国までの道筋を歩いて、辿り着いた其処で笑ってくれますようにと。



祈りを込めて。———A-men.



==========================
四月一日の日常。
ぐだぐだした文章の造りは普段通り。
患者はいつでも募集してます。
怪我した人は診療所の扉を、どうか
乱雑に蹴破って入ってきて下さい。

PR

COMMENT FORM
NAME
URL
MAIL
PASS
TITLE
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
TRACKBACK
TRACKBACK URL : 
2025-051 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 prev 04 next 06
"Reno" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY NINJA TOOLS @ SAMURAI FACTORY INC.