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Reno
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非公開
趣味:
妄想、空想、脳内創作活動全般。
自己紹介:
どうも。店主のレノです。此処は「堕落街」のキャラサイト。
知らない人、18歳未満の方、同性愛に嫌悪感を感じる方は、廻れ右が吉。
そうでない方は、どうぞごゆっくりおくつろぎ下さい。
焙じ茶ですか。それとも宇治茶?御饅頭と水菓子もご用意致しました。
——ようこそ。風月茶屋へ。
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…欲しいモノは、そんなモノじゃないのに。
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そいつが診療所を訪ねてきたのは夜明け前。
雨交じりの冷たい雪が降りしきる、そんな凍える時間帯に
負けじと劣らず体温が失せた白磁の身体を引っ提げて。

——扉を開ける前に、蹌踉けたのか前のめりに倒れ込むその身体を。

仕方ないから片手だけで抱き留めて、深々と吐き出す溜息は、きっと
普段の犬臭さに加えて、ヤニ臭くもあっただろう。ほんの少しだけ
嫌そうに顔を顰める奴の顔は、青白いを通り越して蒼白だった。

——ああ、コイツ、相当———

口を開こうと顔を上げたところで、先に耳に聞こえる掠れた声音。

「薬で良い」


意地を張っているのか、それともただの虚勢なのか、その他の思惑があるのか。
そんなことは知るよしもないが、思わず溜息をついたのは

「…馬鹿なこと言ってんじゃねぇっての。そもそも——御前さん最近全然
自分からきやしないし呼ばないだろ。…こないだだって自宅で死にかけてただろぅが」


二月以上前のこと。以前は一月に一度程度の割合で、定期的に通ってくるか
己を自宅に呼び寄せるかしていた目の前の相手。その割合のペースが明らかに落ちた。
それを不審がって、彼の自宅を往診序でに訪ねたところ、ソファの上、幾ら部屋の
温度を上げようとお構いなしに容赦なく下がり続ける低体温を持て余し、震えながら堪えていた。

ただでさえ、その「行為」を嫌ってギリギリの状況にならないと身を起こそうとしない
相手ではあったが、最近はそれこそ「命の火が途絶えるか否か」の本気で危ない瀬戸際に
半壊れかけの理性を引っ提げて、それこそ死にそうになりながら仕方なしにやってくる。


「大体、あの薬は本当に一時的な気休めでしかない。半日も保たないって解ってるだろぅが」
「…それでも構わねぇっつってんだろ。さっさと寄越せ犬畜生」
「——俺も、最近は「治療」の一種だと割り切ることにしてる。…そんなに嫌か?」
「嫌も何も、俺はテメェが嫌いだ」
「じゃあなんで最終的にしろなんにしろ、御前さんは俺のところに来る?」
「…一番「楽」だからだ」
「じゃあ、なんで最近一番楽な俺を一番楽な「自室」に呼び寄せようとしない?」

「…嫌がるから」
そう、小さく小さく呟いた彼に対し。
「——はぁ…———」
思わず数度目の溜息が漏れる。


目の前の彼は、相手に対する嫌がらせ以外の意味合いで身体を重ね合わせる行為を
「気持ち悪い」から嫌いだと言う。然し、様々な諸事情につき、彼はそれをしなければ死ぬのだ。
死なれたら困るから、体温を求められるまま、ただまっさらな気持ちで彼を抱き、
彼は大型犬にのし掛かられているだけだと自らに暗示をかけるように俺に抱かれるのだろう。

ただ、気持ちがそこに存在しないのなら、それこそ吸血鬼が生命維持のために
生き血を啜るように、通行人をただ押し倒して「体温」を奪ってもいいだろうに

それをしないのは「奴にバレたらバツが悪い」からだと目の前の相手は言うのだ。
——なら、なんで「奴」を抱けないのかという問いには

「——抱き方が解らねぇ」と、呟いてただ頭を振る。

「最近寝れてねぇだろ?」の問いには「また、居なくなるような気がするから」、と。
跫音と気配を確認するまでは眠れない、なんて、どこぞの口説き文句だと
思わず笑いたくなるも、本人に全く自覚もないのだろうとも思う。



——「なんかさ、二人とも——間違った方向に、一生懸命だよね」
そういえば、例の娘がそんなことを言っていたことを思い出す。

自分の問いに、それでも自分の言葉を少しでも返すようになった相手は以前に比べれば
格段に素直に、そして丸くなったのだろう、けれど。——同時に凄まじく馬鹿になった。


本日最後の溜息を、それこそ深々と吐き出せば、薬だけと未だに
意地を張り続ける相手の手首を、半ば強引に引き寄せながら

「…此処で俺が手を離して背中を向けたら、御前さん他に頼るとこなぃんだろぅよ?」
「——五月蠅ぇよ」

「…死にたくねぇなら、さっさと意識手放して俺に委ねろ。一瞬だけ。
 ——そうして、あいつんとこ戻って…——」

         『戻って、ちゃんと、気付いてやれ』

肝心なところを言葉に出来なかったのは、それは自分が言うことではないと。
——思いとどまったから、に過ぎないけれど。

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犬医者と馬鹿天使(…)の「体温」編第2弾。…しかし、なんだ体温編って。
相変わらず馬鹿まっしぐらです。おこちゃまなんです。



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