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Reno
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非公開
趣味:
妄想、空想、脳内創作活動全般。
自己紹介:
どうも。店主のレノです。此処は「堕落街」のキャラサイト。
知らない人、18歳未満の方、同性愛に嫌悪感を感じる方は、廻れ右が吉。
そうでない方は、どうぞごゆっくりおくつろぎ下さい。
焙じ茶ですか。それとも宇治茶?御饅頭と水菓子もご用意致しました。
——ようこそ。風月茶屋へ。
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…欲しいモノは、そんなモノじゃないのに。
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そいつが診療所を訪ねてきたのは夜明け前。
雨交じりの冷たい雪が降りしきる、そんな凍える時間帯に
負けじと劣らず体温が失せた白磁の身体を引っ提げて。

——扉を開ける前に、蹌踉けたのか前のめりに倒れ込むその身体を。

仕方ないから片手だけで抱き留めて、深々と吐き出す溜息は、きっと
普段の犬臭さに加えて、ヤニ臭くもあっただろう。ほんの少しだけ
嫌そうに顔を顰める奴の顔は、青白いを通り越して蒼白だった。

——ああ、コイツ、相当———

口を開こうと顔を上げたところで、先に耳に聞こえる掠れた声音。

「薬で良い」

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酷い、雨だった。
饐えた路地裏に充満する臭気はいっそう酷く。
——其処が塵捨て場なら、尚更、不衛生な場所。

そんなスラム街の一角、夜も更けた丑三つ時。
四つ足で生活する肉食獣の様に地を這い、
息遣い荒く、必死に「何か」を捜す人影、一つ。

——無惨に全身を滴る血液で染めた、死に損ないの哀れな生き物。
磨り減って剥がれ落ち、最早痛覚すら感じぬ爪先で、指先で
懸命に、硬いコンクリートの地面を掻いた。——何度も、何度も。
雨に打たれ、極限迄疲労困憊した身体は、既に息があるだけで、奇跡。
容赦なく体温を奪う冷たい雷雨に打たれた足下、真っ赤な水が流れ出す。
———それと同時に、確かに己の命の灯火も、徐々に消え行く事実を感じた。
されど、もう此の身体を動かしているのは精神力だけ。
見つかる迄は、見つける迄は。——否、見つかる筈が無いと、既に
解っているものを、捜しているのだ。己がしている事は無駄な事だと。

だって、「それ」はもう、壊れてしまった。消えてしまった。目の前で。




———だけど。

———だって、彼奴と、 約束を 。




遡る時間は、数百年も前の事。
幽閉された、暗い石造りの地下牢。
ほんの些細な論争から、思わず手が出て殺害に走った
己よりも随分と階級、地位共に上位の天使様。

上が下した判断は、拷問後処刑。
元々、かなり疎まれていた事は知っている。
体の良い厄介払いの口実が出来、恐らく皆、ほっと一息付いたのだろう。
——此で、異端者は眼前から消えていなくなるのだと。

然し、そうはならなかった事実の先に。——一人の、幼き少女の姿。


彼女の名、「蘭」
とある衝撃で永久に口が聞けなくなった、齢12年の幼い未熟な天使。
美しい純白の羽根はもがれ、輝く金髪は無惨に毟られ。
蒼く透明な瞳は虚ろに光を称え、おぼつかぬ足取りと共に。

己が幽閉される地下牢に、無理矢理押し込められた、事実。

——窃盗。
王宮から価値あるものを盗み、その出所を語らぬ罪。
それが冤罪だと知りながら、どうする事も出来ぬ程、その少女は
余りにも、力が無かった。——だけど、守りたいと願っていた。
その小さな身体で、たった一つ、唯一、大切にしたいと思っている何かを。


「——そんな事、しなくて良い」
先程から、懸命にその小さな掌で、己を拘束する特殊な魔道具の戒めを
解こうと、懸命に足掻き続ける少女を眺め、過ぎ去った時間は丸一日。
朝方から、再び夜が明ける迄。何をそんなに懸命になっているのか、
己の側から退こうとせぬその姿に、漸く声を掛けたのは、余りにも
その姿が痛々しく感じられたからだ。血も涙もないと噂される、
此の男の歪んだ心であっても。——未だ、辛うじて人めいた感情は
残されていたのかも知れない。

その声音に、ゆっくりと貌を上げる少女は、唯穏やかに笑っていた。
ふる、と首を横に振り、また同じ動作を何が楽しいのか、続ける。
一体、どうすればそれを止めてくれるのかと、大きな溜息を
吐き出した処で——気付いた事柄が、一つ。

少女の腹部に、その身体に見合わぬ程の切り傷跡が、視界に入った。
思わず二、三度瞳を瞬いた処で、その小さな動作に何かを感じたのか、
不意に動作を止める少女が己の片手に指先で描く、文字。

「きれいなめ。おはなのいろ」

それをどうにか理解して、思わず呆れ顔。

「——てめぇだって、綺麗な空の色、してんだろ」

思わずそんな、詞を返した、そんな自分に驚いた。
だが、もっと驚いたのは、誰からも疎まれた此の身体に、
何の躊躇もせず、飛び付くように、縋るように
飛び込むように——抱き付かれたその事実に。

耳元で、吐息のみの聞き取りづらい言葉が、続く。

「かあさまと、いっしょの め」

「もう、どこにもいないけど」

「もう、どこにも、らんのかぞくはいないけど」


——その時、何故だか無性に切なくなって。
苦しく、なって。それは、己がとても、弱っていたからかも
知れないけれど。紡いだ詞があるとすれば、それは唯一つ。

「——なら、家族になってやる。俺が、てめぇの」

途端、物凄く嬉しそうな笑みを浮かべる少女に押し倒されるような
勢いで受ける口付けは、酷く甘く、そして、僅かに悲しく。

「なら、にぃさま だね」

満たされたように笑う、少女と。
仮の兄弟ごっこを続けられた日数は、僅か七日間。


冤罪を証明する手筈も無く、無惨に胴体から離れた首を、踏み付ける看守の足。
「処刑」という演目めいた惨劇の中、出逢った当初より幾重にも
澱んだ少女の瞳に見詰められ、遺体から目を逸らす事すら許されず、
凄惨な虐待めいた拷問を予定通り受け。されど、予定通りの死を
向かえなかったのは。 彼女の腹部の傷口の中から、一つの錆びた
ネックレスが見つかった、その事実。


蘭が、何よりも守りたかった、それを
自分が守りたいと思った事実。
彼女の処刑の前日、彼女自身から聞いた言葉。

「かぁさまの、かたみなの」
「でも、みなはちがうっていうの」
「これは、らんのものじゃないって」
「こうかなものだから、らんがもってちゃいけないって」
「だから、おなかのなかにかくしたの」
「ここにいれておれば、だれもとれないでしょ?」


「らんがしんだら、これ、にぃさまにあげる。
らんだとおもって、だいじにしてね」

「——やくそく、だよ」

その時額に受けた、柔らかな暖かな口付け。

その場で全ての看守を血に染め上げ、彼女から託された
それを片手に、地を駆けたあの日。

確かに値打ちのあるものだったのだろう。
それから、何度となく奪われ、幾度となく奪い返した。
その度に手元に戻るネックレスは、何度も形を変えてしまったけれど。

中央の石が粉々に割れたから、己の瞳で代用した。
特殊な技法で宝石に変え、彼女が好きだと言った花の形に加工した。
——されど、それが出来たのは二回だけ。
だから、己の命を石に変え、再び持ち去られた宝石の代わりにはめ込んだ。
おかげで寿命は随分縮んだけれど、そんな事はどうでも良かった。



——されど、もう代用出来るものなど、己は何一つ、持ち合わせていないから。



だから、もう消えてしまったその品を、見つからないと解っているその品を
それでも、捜すことしか、出来ない。

——諦めた。何度も何度も口に出しながら、それでも心は血を流す。

「飽きらめられぬ」と、泣くのだ———





朝方。塵捨て場の前。
もう、最後の気力を絞り出してもとうとう動かなくなった指先と。
足先と、そして身体。——まるで死体の如く、路地裏に倒れる哀れな男。

見つからぬと解っているその品を、それでも、きっと。

今は動かぬ手足が、再び僅かにでも動くようになった時。

また、しょうこりも無く、捜すのだ。
——本当に諦められるその日は、きっと未だ未だ、先にある。


===============================================
某氏からリクエストがあったので、ラキの過去。
…や、過去というより先日のロール補足みたいになっちまったけど;
本当は処刑の模様とかも書きたかったんだけど、凄まじく
グロくなるから、此を目に入れる皆様方の心の安定と秤にかけて
止めました(ぅわ)…最後を「命尽きた哀れな死体」とか何度も
書きそうになった事は置いておいて(…)

ぅん、時キャラの中で唯一、幸せじみた最後のシチュが
思い浮かばないのは此の人。凄惨な死に様ばかりが
思い浮かぶのは、きっとそういう生き方が柄にあっているから。

こういう文章は痛い結果と背後の自己満足しか生み出さないと
解っていながら、矢っ張り好きなんですゴメンナサイ。
時キャラを苛めるの、好きー、というよりはこういうシチュが好き(逝け)



「英さん」

耳元で声が聞こえる。己を呼ぶ、何時もの少し高い特徴的な音。
思わず寝返りを打つように、白いシーツの上、相手に背を向ければ

「こっち向いて下さいよ」

ばかん。

遠慮の欠片もない頭への一撃と、何処か素っ気ない拗ねたような声音が続いた。

仕方なく身体ごと其方へと振り返る。
此方の顔を覗き込むように、問われるその事

「具合はどうですか?」

「良さそうに見えるのなら、御前こそ眼科へ行くべきだ」
間髪入れず、返す詞に向けられるのは、案外穏やかな笑顔。

——何時もの、見飽きた、否、見慣れた。

「医者が行ってましたよ。今夜が峠だって。
ぁーあ、此の不機嫌な面拝めるのも、今夜が最後ってことですかねぇ」

けらけらと、捻子が外れたように一頻り笑った後。
不意に真面目な顔付きに戻れば、横たわるその額に、暖かな掌が触れる。

「…まぁ、あれだ。心配しないで下さい。——約束は、守りますから」

「…約束なんて、していない」

急に何を言い出すのかと、訝しげな顔を作って返す。

「貴方が寝こけている時に、私が勝手に約束したんです。——貴方の寝顔に」

阿呆みたいに穏やかなその笑顔を、何ら崩すことなく言い切る相手は。

己の片手をキツく握り締めながら、されど唯、笑って

「…ずっとお側に居ますから、って」

あの時の詞を、再びそうして、繰り返すように呟いた。


あの日。未だ小柄な少年だった目の前の相手。
家が破産し、親に売られて此の家を訪れた、正しく絵に描いたかの如く
不幸な子供。されど、意志が強そうな黒い瞳を懸命に大きく開き、
片手を差し出しながら、口にした。


僕にはもう、帰る処が無い。
だから、貴方の側に置いて下さい。
使用人として、出来ることは全てやりますから。
——ずっとお側に居ますから、僕を此処に置いて下さい。


そんな彼の目が気に入って、差し出される片手を、そっと此の手で
握った記憶。——随分前の事なのに、未だ記憶に新しい、その時の彼の笑顔。





「…苦しそうですね」

刻は過ぎ、夜半。欠けた月が夜空を寒々しく照らし出す、夜更け。
何時もは気に為らぬ、黒猫の不気味な鳴き声が、今宵は妙に勘に障った。
病人が沈む床の間の真横で、不躾な兄弟が形だけ可愛がる飼い猫。
——猫に罪を被せるつもりは毛頭無いが、楽しそうな彼らの笑い声を
耳に入れれば、不意に殺したい衝動に駆られる。…何時もの風景。何時もの事。


「…苦しくなさそうに見えるのなら、今すぐ脳外科に行ってこい」

「そんな軽口が聞けるのなら、未だ大丈夫ですよ」

「…苦しい、と言えば、御前は楽にしてくれるのか。私を」

「…貴方が、それを望むのなら」



「——延命治療は、もう飽きた」

暫しの間を置いてから、彼に伸ばす片腕は。
空を掴む事無く、きちんと握り替えされ、その体温を脳裏に伝える。

嗚呼、こんなに暖かかったんだな。

弱り切ってしまえば、何時もは別段感じる事無きその熱も。
凄く、在りがたいものに感じてしまうのだ。

「…怜」

小さく口にする、たった二文字の短い詞に。
されど、驚きと動揺を露わに見開かれる相手の瞳は、吸い込まれそうな漆黒。
震える口元が、動く。

「…初めて、名前…呼んで、くれたんじゃないですか…?」

「二度目だ。御前が寝ている時、ひっそり呼んだ事がある」

「…其処は、ちゃんと起きてる時に呼んで下さいよ」

「……五月蠅い」

「———ねぇ、もう一度、呼んで」

「…—— …  」

「 …もう一度、呼んで下さい 」

「…—— …  」

「… …  聞こえません  」


刹那、覆い被さるように縋り付く、相手の背を。
仕方がないな、と抱き抱えるよう、下から片腕を回してやった。

 
「…怜」

その耳元、囁いて相手の希望を叶えてやれば、がばっ、と勢い良く
顔だけを上げる相手の黒い双眸は、水面のようにゆらゆらと揺れていた。

——幸せそうに。嬉しそうに。


「楽に、してくれ」

その詞を、表面上はそっけなく。内心ではかなり無理矢理吐き出して。
途端、勢い良く咳き込む白いシーツの上、広がるそれは、紅くどす黒い液体。


「…貴方が、望むなら」

間を置いて重なる唇は、苦い血の味がした。
長い永い時間が過ぎたような気がしたのは、恐らく。


——それが、最後の生きた時間だったからだ。


視界が反転し、相手の貌が逆さまになって宙に浮かぶ。
夢現を漂うような、されどそれは心地よい感覚だった。
離しはしないと己にしがみつくその腕は
その意志通り、終ぞ離れる事は無い。


「…愛してます」

「…知っている」

「知ってて、知らないフリを貫き通してきたんですか」

「…臆病なんだ」

「知ってます」

「…——御前だって、今まで口に出してこなかっただろう」

「…今、言いましたよ。ちゃんと」

「……遅すぎる」

「良いんです。ちゃんと、通じたのなら」


意識が途絶えるその前に、かわすやりとりは
とても、不器用で。そっけなくて。呆れる程、素顔のまま。


「…やっと言ったな」

「——やっと、受け入れてくれたんですね」



瞳を、閉じた。





後に残ったもの。


空になった水差し。
茶色い盆。
空になった小さな硝子の小瓶。毒々しい赤色の蓋。


重なるように、命が途絶えた二つの抜け殻と。

——枕元に、紅い一輪の、曼珠沙華。



=========================================
書きたかったんです(…)
元ネタは多分、若干一名しか知らないと思うのよ(遠い目)

なので、補足になってない補足↓

一ノ瀬英(いちのせすぐる)(38)(♂)
→名家の跡取り予定だった人。されど、35で重度の肺結核を患うと
 同時にお役御免となり、本家の離れに隔離される。
 表と裏があり、その本性は冷酷で残忍と見せかけた実は、単なる寂しがり屋。
 「沙砂」のNPCとして一度だけパス茶に出没。

怜(れい)(26)(♂)
→庶民の生まれ。財政難と共に捨てられ、一ノ瀬家の使用人として買われる。
 結局一ノ瀬家の、というよりは英単体の使用人となり、病に臥せる
 彼の身の回りの世話の全てを任された。顔で笑って心で泣いて、を地で行く人。
 意地っ張りなのに素直で一途な、そんな子供っぽさは、最後迄抜けなかった。


…みたいな。
まぁ、後は知ってる人が「ああ」と思ってくれれば良いです。
…——あ、ははははは(…)
でも、NPCじゃないとこんな文章も書けないので。
書いてる本人は、結構楽しかったんですよ(…ぺこり)






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