犬二匹。

犬が犬拾って帰ってきやがった。
…や、違うな。客連れてきた、が正しいのか。
けど、犬みてぇな餓鬼だったから、あながち間違っても
いねぇんだろうけど。…何だ、いつから俺ン家は託児所になったンだ。

…ぁ？

手なんか出さねぇよ。人工呼吸器付けた餓鬼なんざに。
別に差別してる訳じゃぁねぇけど、俺ン家で逝かれても
始末が面倒だろぅが。——然し、最近出逢う輩はツクリモノが多いな。

今時チョコも食った事ねぇ餓鬼なんざ、居たんだな。

…食い物くらい、自由に食え。誰も咎めねぇから。
なんならあの狗親父に強請ってこい。…寧ろ盗んでこい。
有り金全部。止めねぇから。——ぁ？　色々あンだよ。恨み辛みが。

風呂

震える掌、頼りない指先。

されど、縋るような眼が、何だかやたらと犬じみて。

嗚呼、ペットらしくなってきたじゃねぇか、なんて思う。

ぐだぐだぐだぐだ、つまんねぇ事考えたり悩んだりする処は
ペットっつーか人っぽいんだが。…良いじゃねぇか。
情緒が成長途上って事にしとけ。

…まぁ、なんつーか。

何だかんだ言って、素直だと思う。

髪を掴む其の手が、此処に居たいと無言で縋るから。

つい、優しくなっちまぅ。…人相手なら、逆に苛めたくなるンだが。

まぁ、奴は犬だからな。愛玩動物。…嗚呼、犬だ。俺の。

所有印。

首輪は、イマイチ趣味じゃねぇ。
かといってペンダントも何か、違う。

だからブレスレットな。色は朱。…少し、意外だったンだが。
天使様は、もっと明るい色を好むのかと。
人工天使なら尚更、白とか青とか好むように出来てンじゃねぇかと。

そうしたら、自分の担当だった天使の髪が朱、とか抜かすから。

嗚呼、そういう感情は在るンだな、と新発見。

怖々ながらも少しずつ懐く感じは結構、面白ぇかも知れない。

所詮愛玩動物だが。——ペットだ。テメェは、俺の。

文句、あるか。

——ねぇな。　よし。