空に祈る

狗、拾った。

名前はソラキ。空に祈る。

…名前、付けてくれるんなら飼われても良い、とか。

テメェもなかなか素直になってきたじゃぁねぇの。
まだまだ生意気だがな。…何考えてんのかは未だに掴めねぇんだがよ。

まぁ、けど確かに、拾ったのは俺だ。
責任持って世話は……や、別にしねぇけど。
テメェの事はてめぇでやれ。塒は提供してやっけどよ。

…大事なもの云々よりも、先ずは自分の意志で動くことから
始めた方が良いんじゃねぇの。——てめぇの場合はよ。

せめて

——約束を守ることが出来なかったから、せめて。

彼奴が救った命だけは、守ってやりてぇと。…柄じゃぁねぇけどな。

俺が居ないトコで死ぬのは構わねぇ。勝手に死ねば良い。

…けど、俺が居るトコで死ぬな。何か後味悪ぃから。

——大人はな、餓鬼よりずっと複雑でややこしくて捻くれてンのが
普通なんだよ。テメェら餓鬼みてぇに、つまんねぇ事で悩んだりはしねぇ。

悩む暇があったら、動くさ。

——貸しにしといてやるから、今度は死ぬ気で返しに来い。
生きるために、足掻けよ。指刺して、笑ってやるから。

…つぅか、本当に貸し、返せよ餓鬼。

何で俺がこんな眼に遭わないといけねぇ…——ってか、
離せ此の糞狗がッ。何で監禁されねぇといけねぇんだっっのッッ（叫）

大切だった、もの。

——言う事なんざ、何もねぇ。

…覚えてねぇし。殆ど。

……守れなかったのは、もう良い。
所詮アレは唯の形見みてぇなモン。

本当のアイツは、もう何処にも居ない。

———だから。


…もう、良い。
此で、俺はもっと捨て身になれる。
自由になれる。
何も考える事無く、唯目の前の快楽を追える。


…——もう、諦めた。

何も、かも。

———俺は、天使なんかじゃ、ねぇんだよ。

異形の化け物で、結構だ。

化け物らしく、精々振る舞うさ。


此の命が、尽きる迄。

——なぁ、ツクリモノのお綺麗な天使様。

彼処でトドメを刺さなかった、テメェの失態だ。

———まぁ、もう。


…良いけどよ。何もかも。　…どうでも、イイ。

テメェが死のうが、生きようが。


だから、もう。



———金輪際、俺の前にその阿呆面、表すなよ。